いさりば

妊婦さんが落馬事故。

数年前のTBSテレビ金曜ドラマ「コウノドリ」のビデオある場面を見た瞬間、胸にしまいこんでいた想いが込上げた。
場面は出産を控える妊婦さんがご主人との電話でお腹の赤ちゃんの様子を楽しみに会話して「それじゃー」と会話が終わった時の出来事だった。通りを車が猛スピードで通り過ぎたと思ったら何かに衝突してその反動で車体飛んできて妊婦さんを直撃した。

筆者40数年前の話になるがある乗馬クラブでの出来事。

近くに川崎・神戸・大阪行きのカーフェリー乗り場があり、乗馬クラブの入り口はカーフェリーを利用するお客さんの目に触れるところにあった。

その日は中学生の乗馬愛好会が練習中だった。30台後半の夫婦が熱心に見入っていた。奥さんは出産間近かという位お腹が出ている。その奥様がご主人に「私馬に乗ってみたい」ご主人が「じゃお願いします」場長が「えっご主人ではなくて奥さんですか?」と尋ねると「はい私です」と奥様。場長と筆者は顔を見合わせた。

出産前に里帰りしたのかそれとも単なる旅行なのか普通は旅行をするには勇気がいる時期だろう。


結局少し歩くだけならということで一番おとなしい馬を選んだ。馬を引くのは騎手を目指す小柄な中学生K君。

とんでもないことが起こった

奥様は乗り込んで「うわー高い、どこに掴まえればいいの」と大はしゃぎ
乗り込み口からゆっくり引き出し歩かせていた。

数分もしない内、馬がいきなり立ち上がり奥様は後ろに落ちてしまった。立ち上がった馬はほぼ垂直状態でバランスを壊し後ろに落ちた奥様の上に倒れ込んでしまった。

馬はすぐ立ち上がったが奥様は倒れたまま、場長、筆者、顧問の先生が傍に行き「大丈夫ですか?痛いとこないですか?」声を掛けながらそっと起こした。

一瞬ではあるが馬の体重(300k)が奥様の上に覆いかぶさった。下敷きになった状態だ。

皆んな顔面蒼白。奥様は「大丈夫です、ビックリしました。こんなことってよくあるんですか?」と笑ってる。場長が「病院に行ったほうが?」と心配しきり本人は「忘れられない思い出になりました」と呑気なこと言ってる。ご主人は「本人が大丈夫といってるから大丈夫でしょう。」とこれまた呑気。

原因はK君が手綱を垂らしたことだった。垂れた手綱を馬が踏んでしまって頭が触れなくなって驚き馬が立ち上がったようだ。K君とこの馬は相性がよく引かなくても馬がK君の後をついてくるので油断して手綱をたらしたようだ。

顧問の先生は目の前で起こった惨劇に何をどうしていいかわからない様子、そのうちご主人が「フェリーの時間がありますので失礼します」奥様も「ご心配かけました。素晴らしい記念になります」と帰ろうとしている。場長はメモに住所電話番号を書いて「何かあったら病院代は支払いますので連絡お願いします。」とメモを渡していた。

馬を引いたK君は青くなったまま傍で涙目だ。奥様が「大丈夫よ、頑張ってね」と声をかけ「バイバイ」と手を振ってる。k君の事を思ってか奥様は問題にならないようにならないようにという配慮だった。

その後この出来事はお互い話題にすることなくと言うより避けていた節がある。

40年前というと時代背景も大きく違う「世が世だったら」という言葉があるが現代にそんなことが起こると学校のクラブとしての問題、乗馬クラブの安全管理の問題、救急車の手配で警察ごとになっていたかも知れない。

筆者は当時馬から落ちたり蹴られたりは何度も体験していたが不思議と怪我をしたりすることはなかったので「大丈夫」という言葉には少しホッとしたがお腹の赤ちゃんの状況は誰にもわからない奥様は腹をなでながら「ごめんねービックリさせちゃったねー」と問題は簡単に大丈夫とは言い難い、昔のことながら悔やまれる。赤ちゃんが強い生命力で大丈夫であったなら現在40歳位。
場長、顧問の先生も既に他界しているのでこの件をしるのはK君と筆者のみになった。

どうか母親、赤ちゃんどちらも無事でいて欲しい。

この話はこの日迄誰にも話しては居ない。現場に居たということでも罪の意識があった。
とんでもない告白ですが一区切りさせていただきます。

天使にラブ・ソングを・・・(吹替版)








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